2021.03.23 Tuesday

「私家版」Neverland Diner 二度と行けないあの店で

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    「Neverland Diner 二度と行けないあの店で」は、都築響一編による100人の著者が書いたエッセイ集。タイトルの通り、もう2度と行く事の出来ない店への思い出をそれぞれが語っているという内容だ。

    「二度と行けない」理由は様々である。既に存在していない店、どこにあったのか思い出せない店、なかなか行くことのできない海外の店、辛い思い出が甦ってしまうので行けない店、ヤンチャが過ぎてしまったので行けなくなった店、、、人には色々な理由があるものだ。

    その理由を読むのも楽しいが、筆者によって思い入れの表現が様々なのがまた楽しい。

    100人の著者がいるので、とても共感を持って読めた文章だけではなく、中にはスカしてるなあとか、そりゃあ盛りすぎじゃないのとか、気合が空回りしちゃったかな、みたいな文章もあったりする。

    そういうものも含めて、非常に読み応えのある本であった。

    そして当然のごとく、自分の「二度と行けないあの店」を想起してしまうのだった。便乗して、101編目の「私家版」としてわたしの「あの店」を書いてみようと思う。

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    「幻の醤油バターコーン」

    わたしが小学生の頃、母は体調が悪く、床に臥せっている事が多かった。
    そんなとき、家事は同居していた母方の祖母が代行していたが、あまり料理をする人ではなかったので、結構な頻度で外食したり、店屋物を取る事があった。

    蕎麦、寿司、うなぎ、ラーメン。流石にうなぎの回数は多くなかったが、週イチくらいのペースでそんなものを食べていたように思う。大抵は出前であったが、ラーメンだけは店まで食べに行く事がよくあった。

    母の具合が出かけられないくらい悪い時は大抵出前を頼んでいたので、ラーメン屋に食べに行けたという事は、比較的調子のよい時だったのだろう。

    そのラーメン屋は、当時住んでいた藤沢市辻堂の、浜見山の交差点の近くにあった「熊の子」という店である。店名からも分かる通り札幌ラーメンの店で、鳥ガラだしの比較的あっさりしたラーメンであった。しかし、これがとてつもなく美味かった。
    といっても、1970年代の普通のラーメンである。具はネギ、チャーシュー、シナチク、なるとという、ごく一般的なもの。スープには、しょうゆ、みそ、塩の3種類があって、さらにチャーシュー、コーン、バター、もやしなどのトッピングがあった。わたしはシンプルにしょうゆラーメンが好きだったが、妹は「もやしそば」が好きであった。母や祖母が何を食べていたかは、まるで覚えていない。

    1970年前後の辻堂と言えば田舎もいいところで、そんな田舎の普通のラーメン屋なのだが、今考えてもかなり美味かったのではないかと思う。味にうるさい祖母のお眼鏡に叶ったのだから、あながち昔の思い出によって美化された味というようなものではなく、本当に美味しいラーメンだったと思っている。今でも独特なスープの匂いが思い出されるが、あのスープの匂いは未だに他のラーメン屋で出会ったことが無い。

    当時のラーメン屋は、今でいうようなスカした店がまえのラーメン専門店なんていうものではなかった。ラーメン主体だが餃子やチャーハン程度のラーメン以外の品もあり、スチールの椅子とテーブルが並び、店の隅には小さなテレビが置いてあって、野球中継やドラマなんかを流しているような、いわゆる町中華の佇まいであった。

    今でも残っているチェーン店で言えば「どさん娘ラーメン」「ラーメンショップ」を想像して貰えればおおむね合っているのだが、どさん娘もラーメンショップも絶滅危惧種になっているので、最近の人には分かりにくいかもしれない。

    都内で探すならば、高円寺の「太陽」が、味も佇まいもイメージに近いと思う。

    テーブル席のほかにはカウンターがあって、カウンターには、ラーメンの湿気や飛び跳ねたツユで、ぶよぶよにふやけて膨らんでしまった雑誌が無造作に並んでいた。

    その、ふやけたマンガ雑誌を読みながら、しょうゆラーメンを食べるのが楽しみだった。
    ラーメンを啜りながら読む本は、「少年マガジン」だった。少年誌といえばマガジンの時代であった。

    マンガ雑誌を買って貰えるような家ではなかったので、マンガはそこで読むことが多かった。あとは小学校の友達に見せてもらったりした。マンガの単行本を買えるようになったのは中学生になってからだ。そんな時代だった。
    今でも覚えているが、そこで「墓場の鬼太郎」や「あしたのジョー」を読んだのだった。中でも「鬼太郎の誕生」は、そのおどろおどろしい内容と絵で強烈な印象を持って記憶している。

    ミイラの親父さんが腐って目玉がどろりと垂れ落ち、その目玉に手足が生えて目玉おやじになるシーンを読みながらシナチクを噛み、ウルフ金串のダブルクロスカウンターを凌いでトリプルクロスを出すジョーを見ながらスープを啜り、アシュラが人肉を食らうシーンを読みながらチャーシューを食ったのだった(それは盛ってるだろ?)。

    そんなわけで、だいたいは醤油ラーメンを食べていたのだが、気になるメニューがあった。それが「バターコーンラーメン」である。醤油バター、塩バター、味噌バターがあり、さらにコーンが乗っているのだ。ラーメンにバターを入れたことが無かったので、それがどんな味なのか分からず、興味深々だったのだが、値段も高いし、そんなものを注文したら怒られそうな気がして、頼むことが出来なかった。

    たまに、大学生風のお兄さんが味噌バターコーンを頼んでいたりして、それがとても羨ましかった。

    「熊の子」は4〜5年くらい営業していたのではないだろうか。小学校6年生くらいの時、店を畳んで北海道に帰り、布団屋になるのだと知った。とても美味しい店で、わたしも妹も良くして貰っていたので残念で、最後にもう一度食べに行こうという事になった。最後に、食べたかった「醤油バターコーン」を食べようと心に決めていたのだが、店まで行ってみると既に張り紙がしてあって、店を畳んでしまった後だった。

    だから、熊の子の醤油バターコーンは、わたしにとって永遠に幻のラーメンになってしまったのだった。

    後年、それこそ「どさん娘」あたりでバターコーンラーメンを食べたのだが、まさかラーメンの上にバターが丸のまま乗っているのだとは知らず、ビックリしたものだった。ひょっとしたら、これは子供には受けない味だったかもしれないと思い、無念の思いを諦めるようにしている。

     

    2020.06.11 Thursday

    書楼弔堂

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      昨日から、週2日体制で会社に通勤しています。
      久しぶりの通勤は、結構体力使いますね(苦笑)。
      これで少し体重落ちると有難いのですが、、、、

      さて、通勤のお供には本です。
      私は基本的に、通勤時間を使って読書していたので、この2か月間、ほとんど本は読んでいませんでした。

      家でも読めないことは無いんですが、なんか落ち着かないですよね。コロナ騒ぎで不安ななか、呑気に本など読んでいられないという気持ちもありました。

      で、まだまだコロナは油断できませんけれども、通勤再開ということで、毎日往復で3時間〜4時間近い時間を消費します。ネットをやる事もありますけど(流石にゲームはしない)、基本的には読書になります。

      京極夏彦さんの本は分厚く、電車で読むには全く適さないのですが、電子書籍になって本の厚みは関係なくなりました。そこで、ずっと前から読みたかった「書楼弔堂」シリーズを一気に読んでいます。

      明治の半ば、古今東西の書物を集めた「弔堂」という謎の本屋に集まる明治の有名人たちの物語です。明治期の最後の浮世絵師「月岡芳年」、幻想文学の先駆者「泉鏡花」、妖怪博士「井上円了」に「ジョン万次郎」「人切り以蔵」ら、名だたる著名人が弔堂に訪れ、店主から渡される一冊の本によって自らの悩みを解決し、開放していきます。

      事実を巧みに利用して謎にオチを付けるなど、京極夏彦ならではの巧妙なストーリー作りには相変わらず舌を巻きます。特に「泉鏡花」の変名「畠芋の助」など、如何にも京極さんが使いそうないい加減な名づけかたなのですが、これが事実なのには驚きました。

       

      明治の世相を皮肉っているように書いていますが、実は現代の問題に言及しているような部分もあり、そこは流石だなと思います。そのあたりを考えながら読み込んでいくのも面白い。

      最後にはファンサービスで、中禅寺さんのお爺さんと思しき人も登場します。

      この人達を弔堂に導く狂言役には「高遠」と名乗る謎の人物。彼の存在が時には著名人の役に立ち、最後には自らも開眼して新しい道に進むようですが、それがどのような形になったのかまでは書かれていません。

      続く第二作では、狂言役がうら若い塔子という女性に変ります。まだ読んでいる最中ですので、これからどうなっていくのか興味津々です。

      いわゆる百鬼夜行シリーズは、京極堂の論説が結構難しくて読みにくいのですが、こちらの主人公「弔堂主人」の龍典さんは比較的平易で分かりやすい説明をするので、京極作品としては読みやすいと思います。

      久しぶりに、がっつりと読書が出来たので、余計なストレスも薄れてきたように思います。やっぱり自分には読書が必要なんでしょうな。

      ところで京極さん、百鬼夜行シリーズの「鵺の碑」はまだですかねえ?
      こっちは14年も待ちぼうけですぜ。



       

      2019.01.15 Tuesday

      リリウム・テラリウム

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        高校生くらいの頃、女の人になりたいという願望があった(笑)
        LGBTとか男の娘とか、そういうのではない。単純に、女子は色々な髪型とかファッションが出来ていいなあ、というような、たわいもない話である。

        当時、男は精々、長髪か七三か坊主頭くらいしか髪型のバリエーションは無かったし、着るものも大して変化が無かった。特に私は、身長182cm体重65kgという超細身体型で、その上、手が長かったので、吊るしの既製品が着こなせないという問題があった。

        Yシャツで言えば、39−86くらいのサイズになるんだが、そんなものは当時売っていない。今では太って43−86サイズになっているが、それでもバーゲンなどでは買えないサイズだ。

        とにかく長袖シャツが無い。当時はLLサイズなんて滅多に無かった。Lだと袖丈が足りないのだ。たまにLLがあっても、今度は首回りが緩い。だからとてもみっともない恰好になってしまう。

        そんなわけで、洋服は着られるものを買うしかなかった。選択肢がない。だから、ファッションに興味が無くなっていく。そういう意味で、色々なファッションや髪型が出来る女性に憧れた時期があったのだった。

        もうひとつ、女の子で羨ましかったのは、スキンシップであった。
        女の子の友達同士で、距離が凄く近い子がいるでしょう。あれが羨ましかったねえ。男同士でそれをやったら気持ち悪いし、そんな感覚は全くないのだが、女の子になって、女の子同士でいちゃいちゃするみたいな事がやりたかった(爆笑)

        まあ、先日のNGTなんちゃらの事件のように、女子の群れには結構陰湿な関係もたくさんあったりするんだろうが、高校生くらいの男子にとって、柔らかい女の子同士のスキンシップって、とても眩しく感じられて、羨ましい行為に見えたんだよね。

        今は全くそんな気持ちは無いのであるが、その時の気持ちが多少残っているのか、いわゆる「百合」と言われるモノが結構好きである(笑)。

        しかもガチではなくて「百合ごっこ」程度のもの。マンガでもアニメでもドラマでも、その程度のものが結構気に入ることが多い。

        で、そういう手合いには最高の本が出た。至福である。好きな人は買うべし。
        こういうのがいいんだよね。現実的ではない!と言われちゃうかもしれないけどね。

        Webマンガのコミック化だそうである。そのWebサイトはこちら→https://comic.pixiv.net/works/3737​

        今時珍しく、全話公開されたまま、コミック化されている。読むだけなら買わなくてもいいんだが、こういうのは買って応援したくなるんだよね。作者は女の人だろうか。男には書けないよなあ、こういうの。


         

        2018.03.08 Thursday

        ぼくらの時代 栗本薫電子書籍全集3

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          2009年に亡くなった栗本薫の未発表原稿「ぼくらの事情」が発見され、電子書籍全集に収録されるというニュースを見て、早速購入してみたのが本書である。

          栗本薫と言えば、グインサーガや伊集院大介などのキイワードが思い出されるSF&ミステリ作家で、速筆であり、膨大な著作が残されている事でも有名である。

          彼女の書いたグインサーガは130巻に上り、死後2名の作家が引き継いで現在も刊行され続けている大河ファンタジー小説だ。

          その130巻を再版するとなると、仮に1巻あたり4千冊刷ったとしても52万部になってしまう。そこまでの在庫を一気に抱える体力は、今の出版社には無いし、これらのシリーズが紙で再販される機会は、残念ながらもう無いのかもしれない。

          だからこその電子化であり、この手の多作な著者の作品を電子化して再版するのは、それなりの意味があるのではないかと思った。もっとも、この全集にはグインサーガシリーズは収録されないようだ。別途、ハヤカワ書房で電子化されるのだろうか。ぜひ電子化して欲しいものである。

          で、「ぼくらシリーズ」である。

          1978年の江戸川乱歩賞を最年少で受賞した処女作「ぼくらの時代」を筆頭に、「ぼくらの気持」「ぼくらの世界」の三部作。筆者と同姓同名の主人公「栗本薫」がストーリーテラー兼名探偵として活躍する物語だ。

          筆者の栗本薫は女性であるが、主人公の栗本薫クンは男性である。このような形の著作は今まで読んだことが無かった。

          約35年ぶりくらいに再読して思い出したのは、ああ、ミステリ作家としての栗本薫、特にぼくらシリーズって嫌いだったなあ(苦笑)、という事だった。
          グインサーガや伊集院大介シリーズは好きなのだけれども、ぼくらシリーズとは相性が悪かった。まあ、この人に限らず、その作者の著作全てが好きっていう事はないのでね。推理作家で全作品が好きっていうのは仁木悦子くらいのものだ。

          ※以下、ネタバレを含むので要注意。

          「ぼくらの時代」で感じた違和感は、主人公を含めた若い男3人が、連続女子高生自殺を許容してしまったという点に尽きる。初めて読んだ当時高校2年生くらいだった私は、どんな理由があっても、女子高生の自殺を補助するような行動を、若い男が取るだろうか?という疑問を感じたものだった。

          男なんだから、喩え好きでも嫌いでもない女の子だったとしても、これから自殺をしようとしている少女を止めるどころか、それを補助するような行動に出るなんてことがあるはずがない。と、若き日の私は思ってしまったのだ。

          結局、栗本薫(作者)は女だから、男の感情なんで分からないんだろう、と、妙な反感を持ってしまったものである。

          今になってみれば、多少無理があるとはいえ、そういう事がある可能性は否定しないが、男3人寄ってたかって、全員が全員そうなるというのは、やはり不自然なイメージがある。

          第二作「ぼくらの気持」は、主人公が惚れた少女が殺人犯の共犯の悪女だったという、今ならかなりステレオタイプな設定で、久々に再読した今回(内容はすっかり忘れていた)、あー、この子犯人なんだろうな、と思わせる書き方が随所にあったりして、最後まで読んで、やっぱりなあと思ってしまった。明らかに犯人であることを示しているのに、何で惚れるかねえ?という冷静な考えしか出て来なかった。年を取るって嫌だねえ。

          だが、若かったころ、この設定にも嫌悪感しか感じなかった。惚れた女が犯人って、やるせなさ過ぎる。しかも悪女。同情の余地もない悪女。うわー、こういう冷徹な設定をしちゃうのも作者が女だからなんだろうな、と思っていた。

          第三作「ぼくらの世界」は、エラリー・クイーンの著名な作品のトリックを応用した、ミステリファンには嬉しい設定になっていて、これだけは比較的楽しく読めた。ただ、こっちの頭が古くなってしまっていて、Yの悲劇なんて10回くらい読み直しているはずなのに、トリックの内容を覚えていないという始末。まったく、年は取りたくないもんだね。

          小説の中に、その時代の風俗とか流行を取り入れてしまうと、後になって陳腐化するのだが、栗本薫の著作には割とそういう部分が多くて、今回も音楽を取り入れるくだりで、70年代の古い曲ばかりが出てきてしまい(仕方ないことだけど)、そこがダサいと感じてしまった。

          いやまあ、彼女の音楽趣味って自分とは合わないので、ダサいと思ってたのは昔からなんだけれども。ダサいっていうか、こっぱずかしいっていう感じ。この本を〇〇という曲に捧げるとかさ、恥ずかしくて書けませんよそういうの。

          未発表原稿の「ぼくらの事情」は、ほんの導入部だけしかなく、肩透かしを食わされたイメージもあるが、これが何故没となって第二作「ぼくらの気持」に変わっていったのか、という点については永遠の謎になってしまった。そこがちょっと残念であった。

          この全集には、名探偵栗本薫が登場する、ぼくらシリーズ以外の長編作品も2作品収録してある。

          「猫目石」は、その栗本探偵と、もう一人彼女が生み出した名探偵、伊集院大介の両ヒーローが登場する作品だ。

          ぼくらシリーズに比べて、伊集院大介もののほうが好感度が高い本格推理小説なのであるが、この作品は視点が栗本薫になっているので、どちらかといえば「ぼくらシリーズ」に近いものになっている。しかもまた、性懲りもなく主人公は胡散臭い少女に惚れてしまって、悲劇の最期を迎えてしまうのである。筆者には多分に、自分の創作したキャラクターを虐めるのに快感を得る性格のようで、探偵の栗本君も、伊集院大介も、グインサーガの主要メンバーも、ことごとく酷い目に遭っている。まあ、40年近く栗本さんの書く主人公イジメ作品と付き合ってきたので、最近では慣れましたけどね。

          トリックに重点を置いているタイプの作品ではないので、そこは大目に見るとしても、双子のトリックはちょっと卑怯かな、と思ってしまったのを思い出した。ヒントは随所に書かれているのだけれども、私は双子トリックは嫌いなので、今回も、まるで同じ感想であった。

          「怒りをこめてふりかえれ」は、事実上の栗本探偵シリーズの最終作。本作だけは、主人公が酷い目に遭うのは変わりないが、ハッピーエンドになっている。こちらにも伊集院大介が登場。

          内容は、マスコミに対する徹底的なバッシングになっていて面白い。筆者自ら、不倫の果てに略奪結婚みたいな事になっているので、自分自身の経験や怒りが相当反映されているように思う。まあ、これが出版された当時のいわゆる「フラッシュ、フライデー」に代表されるパパラッチ的な過激報道には、それを見ていた我々ですら、被害者に同情を禁じ得ないものであった。今の文春砲どころの騒ぎではなかったからね。その辺りの体質は、今でも全然変わっていないのかもしれない。

          結果的に、この作品が一番面白くて個人的な共感も高いが、推理小説としての出来はもう一つ、という不思議な話になっている。筆者が書きたかった事は、過剰なマスコミへの批判であって、それを推理小説の体で書いたという事なのだと思う。

          と、ここまで書いてきて、著者の享年が、ちょうど今の私の年齢とイコールであることに気が付いた。

          生き急ぎ過ぎたのであろうなあ。もう少し色々抑えて、地道にグインサーガシリーズだけ書いていれば、こんなに早死にすることは無かったのではないかと思ってしまう。返す返すも残念でならない。

          なんか文句ばっかり書いている文章になってしまったが、一番長くリアルタイムで付き合った作家のひとりなので、こればっかりは仕方ない。特に死んじゃったからね、恨みつらみを書くしかないという感じだ。

          栗本さんとは、ニフティの天狼パティオで少しだけやり取りをしたことがあるんだが、あそこ、ROMってる常連さんの視線を物凄く感じるという不思議なSNSで、何だか物凄く居心地が悪くて早々に逃げ出してしまった。単なるSNSというか、掲示板なのに、他の参加者の視線を感じるという恐怖体験を味わったのは、後にも先にも天狼パティオだけであった。

          だってねえ、会員制のSNSで、新人なのに、誰もチョッカイ出してこないんですよ。明らかに様子見している。その中で栗本さん(中島さんと言うべきか?)だけが、おっそろしいスピードでレスをガンガン付けてくれた。だから基本的に私と彼女の会話だけがツリーになっていて、そこに誰か絡んできても良さそうなのに全くそれがない。

          それが怖かったね。なかなか面白い体験ではあったけれども。もしかしたら、そういうのがそのパティオの礼儀だったのかもしれない。ツリー主と栗本さん以外の余計な発言はしない、みたいな感じ?いや、他のツリーはそんな感じじゃなかったけどなあ。もう20年以上も前の話だ。

          そんな事を思い出した。良い買い物であった。

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          電子書籍というモノについては懐疑的であったが、本書を読んでみて、手軽に複数の本を時系列的に並べて続けて読める、という新しい接し方をする事が出来、意外とこのスタイルも悪くないんじゃないだろうかと思い始めている。



           
          2018.03.07 Wednesday

          巨乳の誕生

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            今週は、読書週間です。今日も本の紹介をします。

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            昨年暮れに購入しておきながら、なかなか読めなかった。

            読書はもっぱら、通勤電車の中なのであるが、そういう場所で広げるにはちょっと憚られるタイトルである。尤も、本文の中には突然、おっぱいの写真なんか出て来たりしないので、そういう意味では安心して読めるわけだが。

            これから仕事、という段階の通勤電車の中で、巨乳に関する話を読むのも如何なものかと思ってしまった、という事もある。

            だが、それは杞憂であった。

            面白い。

            序章が、公式ブログで公開されているので是非読んで頂きたい。

            http://kyonyu.hateblo.jp/entry/2017/11/08/191424

            どうです?さらに読んでみたくなったでしょう。

            導入編からしてこれである。

            後は、淡々と巨乳文化の歴史について書かれているのだ。エロ本ではなく、これは立派な歴史研究書と言っていい。

            それは、著者の前作「痴女の誕生」で分かっていた事ではないか。前作も立派な研究論文であった。

            だから、この本はエロ的興味ではなく、文化人類学的興味を以って読んで頂くのが正しい作法であろう。

            だが一方で、この本を紹介するのには、少し抵抗があった。

            ウチのブログの読者は、妻を筆頭にして女性が少なくない。しかもほとんど知り合いなので、「じゃんぼうさんったら、巨乳好きだったんだ」とか誤解を受けかねない本を紹介することになってしまうので、そこに抵抗があった。

            まあ、男ですからね。嫌いじゃないけどね。大きすぎるのもね。

            ゲフンゲフン。

            そんなわけで、2カ月以上も引っ張って来てしまったのであるが、ここに来て友人知人の本が立て続けに出版されているので、それに紛れて「今週は読書週間!!」という形で、この本も紹介することにした。

            読みやすく一気に読めてしまうので、その意味でも、お勧めの本である。

            特筆すべきは、この本の中には画像や写真が一枚もないという事だ。

            おっぱいの本なのにおっぱいの写真が無い!騙された!いや、そうではない。

            「巨乳」という言葉の誕生、文化の誕生についての研究本なのである。だからこそ、画像や絵は必要ないのだった。

            ***

            冒頭、「はじめに」を読んで困惑する。

            「現在のAV業界ではGカップ以上が巨乳という事が常識」

            えっ?Gカップ?何そのインフレ?!

            我々が青少年だったころは、Cカップでも大きめで、巨乳というかボインはDカップという解釈であったが、今はGなのか。何だよGって、乳牛かよ。あんまりデカいのも反って色気無いんじゃないかなあ?とか思ってしまうのだが、趣味趣向なんてものはそんなもんだろう。

            序章

            原宿ヴィレックスには、特撮ビデオを買いに行ったことがある。プロレスビデオも売られていたのだが、当時、この手のビデオ作品は1本1万円以上する高価なものであって、おいそれと買えるものではなかった。

            色々逡巡して、「キャプテンウルトラ」のビデオを買ったのであるが、アントニオ猪木の格闘技戦のビデオもちょっと気になったなあ。しかし、そこに巨乳アダルトビデオがあったという事はあまり記憶にない。当時は1万円出してアダルトビデオを買うくらいなら風俗に行く、みたいな感覚があった気がする。エイズなどの問題が出る少し前だったし、今ほど気楽にビデオ鑑賞できる環境も無かったから、無理もない事だと思う。
            その前後に、いわゆるレンタルビデオ店が開業し、ビデオは1泊1000円くらいで借りることが出来た。相当なインフレ時代である。

            そんな事を思い出してしまった。

            そうして、ようやく第一章だ。

            ここからこの本は様相を一変して、巨乳文化の歴史を掘り下げていくのである。

            一番意外なのは、海外に於いても巨乳を好む歴史は浅く、100年にも満たないという点であった。確かにルネサンス期の絵画や彫刻を見ると、豊かな胸という作品は多くない。むしろ腰や腹のふくよかな肉感の中に、小ぶりな林檎のようなおっぱいが付いているという印象がある。

            第二章での、おっぱいは性的対象ではなかった、という指摘も、なかなかに読ませる内容となっている。特に日本に於いて、おっぱいは乳幼児に乳を与える器官に過ぎず、性的対象ではなかった。胸は顔に繋がる体の一部でしかなく、胸を見たからと言って性的興奮を覚えない。しかるに銭湯は混浴であり、春画等でも胸に対する描写は浅く精細ではない。更に明治時代に入って、有名な黒田清輝の「腰巻事件」にまで言及するくだりには大変な説得力を感じた。

            それ以降も、今まで私の持っていた乏しい常識を覆すような話が目白押しである。詳しくは是非、本書を購入して、その真面目な研究を堪能して頂きたい。

            タイトルで損をしているのか得をしているのか、よくわからないけれども、女性にもおすすめしたい真面目な研究本である、と言っておこう。

            そうそう、この本は電子化されているので、書店で買いにくいとかネットでも買いにくいという人は、電子書籍で買う事をお勧めしておく。ちなみに私も電子書籍で買いました。

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            最後になるが、「痴女の誕生」「巨乳の誕生」と連作になったので、是非とも次回作も「○○の誕生」として三部作で締めて頂きたいと、切に願うものである。



            2018.03.06 Tuesday

            とみさわ昭仁さん 「無限の本棚 増殖版」 発売

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              一昨年単行本で発売された、とみさわ昭仁さんの「無限の本棚」が文庫化された。

              単行本発売からわずか2年で文庫化っていうのはどうなの?とか思ってしまう事もあるかと思うが、単行本のほうは、出版社から一円も原稿料を貰っていないという、信じられない事実があったりするそうなので、仕方ないことだと思う。

              私はそれほど出版業界に詳しくはないが、原稿料遅配や異常なダンピング、無断使用など、節度のないヤクザみたいな話も度々聞いたことがある。

              私ですら、ごくわずかなライター活動の中で、約束した原稿料が支払われなかったケースがあって、何度か督促してようやく支払われたみたいな感じで、そういう事が続くと、そこの仕事は受けたくないなあと思ってしまったものだ。金額が安いので、たかが数千円のために無駄な神経を使いたくないので泣き寝入り、みたいなケースが多いんだろうか?とか、妙な勘ぐりをしてしまったものだ。

              特にネット文化になって、紙の書籍に寄稿する文章より、ネット文章のほうが遥かに安い原稿料だし、支払いをバックれるケースや、タダで書かされるケースなどもあるらしい。そうやって書き手を蔑ろにするから、ネットの記事などマトモなものが少なく、読んでも時間の無駄みたいな駄文が溢れかえるのであろう。

              とみさわさんがこの本を書くにあたって、ほんの些細な事を私に確認してきたことがある。趣味に関しての細かい話で、なかなかネットでは出てこない情報だったので、喜んで協力させて頂いたが、そういう細かい部分でもしっかり裏を取る姿勢というものに共感を持った。

              だからこそ、こうやって紹介出来るのだし、いくら友達でも、嘘八百を並び立てるような文章しか書けない人の本や記事は紹介出来ない。

              それはさておき。

              文庫になって、「増殖版」と謳っているだけに、幾つかの内容が追加されている。
              私が書くより、ご本人のブログで紹介されているので、それをリンクしておく。

              http://maneater.hateblo.jp/entry/2018/03/04/135019

              http://maneater.hateblo.jp/entry/2018/03/05/090937

              http://maneater.hateblo.jp/entry/2018/03/06/091804

              この中では、伊集院光さんとの対談が一番、一般受けすると思うが、私が興味深いのは、

              「自分よりすごいコレクターと出会ったらそのコレクションをやめてしまう」

              という話で、それに関しての、3人の剛腕コレクターとの対談である。

              私も、自分より凄いコレクターが居たら、そのコレクションは辞めてもいいかなあ?と思っているタイプなので、どんな話が出てくるのか興味津々というところだ。

              無限の本棚の文庫版は本日発売!

              単行本を買った人も買い直すべきです。単行本はブックオフに売っちゃおう。





               
              2018.02.08 Thursday

              感染領域

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                ここの所、個人的な事情であまり読書をする気分になれない日々が続いていた。撮りためた映画やアニメも貯まりに貯まっていて、会社を辞めて半年くらい毎日テレビに齧りついて再生しても全部見切れないくらいにハードディスクを圧迫している。

                が、それらの「不良在庫」を差し置いて、すぐにでも読みたいと思った本が出版された。

                2017年第16回「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞「カグラ」を改題した「感染領域」である。著者のくろきすがや氏は、エラリー・クイーンや岡嶋二人同様、コンビで執筆する二人の作家のペンネームだ。

                トマトが枯死してしまう謎の病原体の調査に当たる植物学者が、その調査をキッカケにして殺人事件を発端にした危機に立ち向かっていく、サスペンス小説である。
                謎解き要素に重点は置かれておらず、単純にダイナミックで巨大なスケールの危機とそれを防ごうとする主人公の戦いに主眼が置かれており、肩肘張らずに読み進めることが出来た。

                驚愕するのは、バイオテクノロジーに関する記述で、失礼ながらお二人ともそちらの専門家というわけではないのに、物凄い情報量と、それを描き切る力量に驚嘆せざるを得ない。
                私とて、この分野は全くの門外漢なので、その内容の正確さを推し量ることは出来ないのであるが、どう考えても付け焼刃的に勉強しただけで、このプロットが思いつく道理はない。

                バイオ技術の専門家が手慰みで小説を書きました、というのであれば納得できるが、全くの門外漢であるお二人が、ここまで本格的な専門用語を並べ立て、最先端の分子生物学を手玉に取ってサスペンス小説に仕上げてしまうのには、どれだけの勉強と咀嚼を行ったのであろうか。ちょっと想像できない。

                私はミステリ好きだが、乱歩正史で始まり、クリスティ、クイーンらの洋物にハマってから、和久俊三の法廷物、仁木悦子、栗本薫、宮部みゆきの女流を経由して、我孫子武丸、京極夏彦、貫井徳郎で屈折し、最近は首藤瓜於と飴村行という流れ(飴村さんをミステリ枠に入れるべきかどうかは異論があるけれども)なので、正直サスペンス系は苦手である。

                そんな私をしても、一気に1日で読み切ることが出来る読みやすさと、引きずり込まれる文章、展開の見事さは、これが処女作とは思えない完成度だと思う。

                ***

                さて、ここからは自慢話である(笑) どう書いても自慢話にしかならないので、開き直ることにした(笑)


                実は、くろきすがや氏の片方、主に執筆を担当された菅谷淳夫氏は、横浜ベイスターズファン繋がりの友人なのだった。だから余計にビックリしたもんだ。

                「このミス大賞」に選出された知り合いは二人目である。もう一人は、第13回の隠し玉「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」の作者山本巧次氏。氏は高校大学を通じて「鉄研」の先輩なのだった。高校時代から「コージさん」は部誌に小説を書いていたので、このミス大賞に選ばれたときも、「おー!」という感じだったのだが、すがやさんのほうは、正直びっくりした。文章のお仕事に就いているのは知っていたのだが、まさかこんな形でミステリ界にデビューなさるとは!

                「このミス」には浅からぬ縁があるようで、13回の優秀賞「いなくなった私へ」の著者、辻堂ゆめ氏も高校の後輩のようである。ペンネームを見て、もしやと思ったら当たりであった。13回は、辻堂氏、山本氏と2名の母校出身者が同時に出たというわけだ。まー、大先輩には石原慎太郎だの江藤淳だの斎藤栄なんかが居る学校なんでね。長く生きてるとこんな事もあるというわけだ。

                ネットの普及によって、思わぬ才能をお持ちの方々と交流が出来、ここ数年、その方々が着実に実績を積み上げていく姿を眺めていると、こちらも晴れがましい気持ちになる一方で、じゃあ自分はどうなんだ?と思った時に、多くの挫折感を味わったりもしている。

                だが、去年は微細ながら写真と模型で実績を残せたので、それが多少の自信回復につながった。それゆえ、仲間の活躍には、今はむしろ自分へのエールとパワーをもらったような気分になっている。

                自慢話おわり。

                ***

                さて、小説の話に戻りましょうか。ちょっと文体を変えて。

                以下、ちょっとネタバレっぽい部分があるので注意してください。

                「このミス」応募時には「カグラ」というタイトルでしたが、この度文庫で出版される際に「感染領域」というタイトルに改題されました。「このミス」作品の改題は常套手段なのですが、今回の改題は成功と思います。サスペンスっぽい感じが良く出ているし、話にも入りやすいと思いました。
                「カグラ」だと、神楽を連想しがちなので、もっと神秘的な話とかファンタジー系と思われるきらいがあると思います。

                読み始めて、ああ、これは菅谷さんの文章だろうなと思わせる所が随所にあり、巻末の解説でプロット担当が那藤氏、執筆が菅谷氏という説明を読んで納得しました。書きなれているかたの文章は実に読みやすいのです。

                あと、声を大にして言いたいのは、

                「プログレファンは是非、この本を読みなさい!!」

                という事です(笑)。そういう趣向の無い人だと、普通にスルーする数カ所で苦笑すること間違いなし!

                話が壮大で、トリックは少なく、サスペンス要素が高い上に、表現力が豊かなので、これは映像化に向く題材であるとも思います。予算たっぷり使って映画化するのが良いのではないかなあ?

                割とすんなり、主人公の安藤には長谷川博己、里中しほり役に石原さとみっていう名前が出て来ちゃったんですが、それじゃあ、まるっきりシン・ゴジラだ。

                モモちゃんは豊川悦司かなあ?だとすると、年齢的には安藤は今をときめく豊原巧輔か堤真一か。

                いや、ちょっと暴走しました。全部なしで。

                映像化の際には、端役だけれど、林田のおじさんを演じる人が結構キモになるような気がします。

                「2」の意味が比較的序盤で「もしかしたら?」と思っていたので、その謎解きはやっぱりねと思ったのですが、さらに上を行ったのには脱帽。アレは出てこないわー。ちょっと強引かな?とも思いましたが、医学系の人なら当たり前に出てくるのかも。そういう「後付け的な裏付け」とか「読者の勝手な深読み」で納得できるという部分も、良い本の理由と言えるでしょう。

                序盤で何気なく出てくる人が重要なカギを握っているのは、ミステリの王道とも言えますね。ああ、やっぱり出てきたと思ったけどその次の設定が!色々盛ってあって面白いです。

                そして一つだけ気になった点を挙げるとすれば、「ルーザー」という表現でした。
                私が無知で、聞きなれていないだけの話であればよいのですが、恥ずかしながら辞書を引いてしまいました。分かってみれば、ああなるほどという話なのですが、カタカナなのが分かりにくかったかもしれません。LOSERと書いてルーザーとルビを振るか、「負け犬」とか「敗者」みたいなルビが振ってあったほうが良かったかな?割とキイワードなので、余計にそう思ってしまいました。

                しかし、そんな些細な点を差し置いても、書いたのが半分友人だという事を抜きにしても、この本は傑作です。是非読んでみてください。

                ***

                そして、もう一冊、去年から読もうとしてるハードカバーがあるんですが、内容的に、ちょっと電車の中とかでは読みにくいからなあ。何とか近々、読むようにしたいと思います。




                 

                2017.11.26 Sunday

                杉本一文「装」画集

                0
                  「杉本一文」という名前を聞いて、「横溝正史」という名前がすぐに出て来るかたは、相当な横溝マニアと思います。
                  昭和50年ごろから、本屋さんの角川文庫の棚を占領し始めた黒い背表紙の一団。横溝正史シリーズの表紙絵を描いていたのが、杉本一文さんです。

                  その「表紙絵」の画集が発売されました。

                  杉本一文「装」画集 です。



                  全ページカラーグラビアという豪華版。角川文庫の「緑304」の作品群は勿論、それ以外の本や雑誌の表紙絵も含まれていて、まさに完全版と言えるでしょう。



                  獄門島の恐ろしくも美しい表紙絵。これが一番好きかな?

                  中学に入ったばかりの頃、本屋さんでこのシリーズを見つけてハマったのですが、杉本さんの絵は「怖い絵」である以上に「エロチック」なのでした。しかも、単純なエロではない。「淫靡」という単語が良く似合うのです。

                  第二次性徴が始まったばかりの雀坊少年には、少しばかり刺激の強い絵ばかりでした。

                  緑304の横溝本全99種、絵柄の違いなどを入れると120冊以上になるコレクションは、現在でも我が家のスライド本棚の1個分を占領しています(苦笑)




                  その、文庫サイズの淫靡で恐ろしい絵が、大判で堪能できるんです。こんなの買うに決まってるじゃないですか。


                  2017.09.01 Friday

                  電子書籍を買ってみる。

                  0

                    電子書籍というものには懐疑的であった。

                    「電子書籍を買う」というが、実質的には「読書権を買う」のであって、「書籍を自分の所有物にする」わけではない。従って、買った電子書籍を古本として売買することが出来ない。これが第一の不満。

                    紙媒体ではないので、飛ばし読み、流し読みみたいな事がしにくい。推理小説なんかは、何度も行きつ戻りつして読んだりするので、そういう自由度の低い電子書籍は、少し読みづらい。これが第二の不満。

                    電子モノっていうのはサービスを終了した時点で灰燼と化すわけだが、電子書籍も同じ事になるのだろうか、そこに対する不安が払拭出来ないうちは、手を出すべきではないと考えていた。

                    さらに言うと、私の主たる読書時間は電車の中なので、電子書籍を読むとしたら携帯用デバイスになるのだが、携帯用のデバイスはiPhoneSEしか持っていないので、これで電子書籍を読むのはかなり辛そうである。

                    専用のキンドルなどを買うほど投資はしたくないので、そうなると電車の中では読めないから、必然的に電子書籍は要らないな、という判断になっていた。

                    ところが最近、読みたい本が電子書籍でしか販売されない事が増えてきた。最近の傾向として、出版するにはハードルの高い書籍や、その他さまざまな理由で、電子書籍でしか出版されない本というのが一定量存在するようになってきたのである。

                    こうなってくると、いずれ電子書籍を買う日が来るのだろうなあと、薄ぼんやり考えていたのだが、その時期は意外と早く訪れた。

                    栗本薫さんという作家がいる。いや、いた。グインサーガなどのヒロイックファンタジーや、魔界水滸伝という伝奇SFなどで有名な作家であるが、8年ほど前に亡くなり、グインサーガをはじめとして幾つかの長編作品が未完で終わってしまった。

                    この人の作品群の中に、伊集院大介シリーズという探偵ものがあるのだが、その最後の作品が電子書籍のみで発売されるというのだ。

                    元々コレクター気質があり、伊集院大介シリーズは全て読んできたので、この新作だけを読み逃すわけにはいかない。幸い、先日、hontoというWeb書店のキャンペーンで、1000円分の電子書籍購入券をもらっていたので、早速これを活用して、この新作を買ってみる事にした。

                    hontoの場合、読むためには専用アプリが必要である。

                    PC用のアプリをダウンロードし、インストールして、アプリを開くと、自分の本棚に今買った本がセットアップされているので、これをクリックすると本が読めるようになった。

                    画面フルサイズだと大きすぎるので、適度な大きさに画面サイズを調整して読み始める。最初は抵抗があったが、読み進めるうちに気にならなくなった。

                    この本には4作の短編が収録されていて、そのうち3つは単行本未収録という話であったが、いずれも既読。どこで読んだんだろう(苦笑)。久々でもあったので、最初から通して読んでみる。栗本薫は、長編は上手いと思うが、短編は下手だなあと苦笑しながら読み進めることが出来た。

                    ところで、この本のアプリをインストールしたのは会社のパソコンである。弊社のパソコンは、社員が遊べないように色々なガードが掛かっている(例えば、DMMなどには繋がらないので艦これを会社のPCでプレイすることは出来ない)のだが、hontoには繋げられて、書籍のダウンロードも可能であった。まあ、読むのは小説とは限らないので、仕事で使う専門誌なども読めるよう配慮されているのかもしれない。

                    仕事の空き時間を使って半分ほど読んだのだが、これは色々と便利である。サボっているというわけではないのだが、仕事中に、本を開くことなく画面上から読むことが出来るのは、色々な部分で都合が良いのだ。

                    ひょっとしたら、色々使えるかもしれんなあ、と思っている。

                    今日はiPhoneに専用アプリを入れてみた。字が小さかったらダメだと思っていたが、表示される文字数が少ないので、読めないという事はない。ただ、当然ページ当たりの表示文字数が少ないので、最初はとても読みづらい。しかし、これも読み進めていくうちに慣れてしまった。

                    こうやって、段々電子書籍に慣れてしまうと、紙の本が煩わしくなってくるのだろうか。

                    でも、やっぱり本は紙で読みたいんだよね。

                    ちなみに買ったのはこの本です。

                    伊集院大介最後の推理

                     

                    2017.07.10 Monday

                    BABEL : HIGUCHI YUKO ARTWORKS

                    0

                      5月頃、東京で展示会をやっていたのを見逃してしまった、ヒグチユウコさんの作品。今、京都のTOBICHIで開催していますが、流石に京都まで見に行く時間も金もなく。
                      ガッカリしていたら、本が出ていました。



                      「悪魔のクリエイター」ヒエロニムス・ボスと、「バベルの塔」のピーテル・フリューゲルの描く世界観をベースに、独自の解釈を加えた幻想的な画集です。

                      装丁もさることながら、金の箔押しを使った豪華な内容も素晴らしかった。この手の細かい書き込みの多い幻想的な絵って、どストライクなわけですが、オリジナルキャラクターの「ひとつめちゃん」や「ギュスターヴくん」たちがキモ可愛く、ボスやフリューゲルの作品には無い親しみやすさがあります。

                      初回限定版には「ひとつめちゃん」のエンボスカードが添付。

                      買うなら今しかない!



                       

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