デフォルト
IT業界では「初期設定」という意味で使われる。
入力値に、あらかじめ特定の値をセットしておいて、意図して変更しなければその値が使われるような設定にしたい時に使う言葉だ。
「デフォルト値を1にする」みたいな使い方をする。
しかし、こんな使い方をしているのはIT業界のみだ。
金融業界などでデフォルトと言えば「債務不履行」を意味する。
スポーツ界では「棄権」の事だ。
どちらかと言えばネガティヴな用語なのだが、IT業界に限ってまるで違う使い方をしているのだ。
これは何故なのか。
こういう時は、その言葉の成り立ちから考えてみると分かりやすい。
デフォルトはDefaultと書く。fault(責任・故障)をde(否定・離す)する。すなわち、間違ったものを切り離す。みたいな意味合いの言葉である。
責任という意味のfaultが実行できないから「債務不履行」
故障という意味のfaultを切り離すから「棄権」
という意味なのだから、金融業界とかスポーツ業界の「デフォルト」は分かりやすい。
ところが、IT系では「初期設定」という意味になってしまっている。これは何故か?
そもそもデフォルトとは、入力という行為に於いて、間違った入力をさせないようにするために、特定の値をあらかじめセットしておくという時に使う用語だ。「入力しなくても適性な値がセットされているので間違いを回避できる」という状態にすることがデフォルト値をセットする、という意味の本来の使い方である。
だからデフォルトという言葉はIT業界に於いても、本来は「fault(間違い)をde(入力させない)」という意味で使っているのだ。それが転じて「初期設定」のように使われるようになった。という事なのである。
従って、あくまでも入力補助としてエラーを防止する意味でセットする値の事を「デフォルト値」と言うべきであって、「標準化されて一般的になった値」というような意味で使うのは誤りなのである。
でも、今は「初期設定/標準設定」みたいな意味でデフォルトを使っているIT関係者は凄く多い。辞書にまで「標準設定」などと書いてある始末。特に「デフォで」なんて言う奴に限って全然使い方を間違っていたりする。困ったもんだよ。
タッパーって他に呼び方ある?
昨日の「猫車」については思わぬ新情報(私が知らなかっただけかも)が集まり、こういう時にインターネットというのは凄いなと思います。ネットには書いてない事でも、疑問を呈することによって情報が集まり、それを記録しておくことで他者にも情報開示出来るという事の意味はとても大きいと思いました。
さて、今日もFacebookからのネタ引用になりますが、友人のFuzzyさんが呈した疑問。
これ、何ていう?
タッパーウェア、もしくはタッパーですねえ。他の呼び方を知りません。
ただ、タッパーウェアは商品名(会社名)なので、タッパーウェア社製以外の同等品を、そのように呼ぶのは相応しくありません。だから、タッパー以外の名前があるはずです。
そう思って調べてみましたけれども、なかなかそれらしい言葉が見つからない。
パックとかストッカー、コンテナなどと称しているケースが多いようですね。それでも違和感あるなあ。それだけ、タッパーと言う名前が普遍化しているという事なのでしょう。
タッパーウェア社は、1980年代後半に、「タッパーと呼べるのはタッパーウェアだけ」のメッセージをCMで流していましたが、もはや一般名称化した感があります。
一般名称として世間的に認識されてしまうと、商標登録は困難になります。タッパーウェアは商標登録されていますが、他に言い換えにくいので、タッパーウェア社も半ば諦めているような気がします。
商標が普通名称化したものと言えば、代表的なのは「エスカレーター」で、これはかつて、オーチス社のブランド名でした。あまりにもその名称が通り名となってしまい、今では商標権が消滅して、一般名称となっています。
「正露丸」も一旦は商標権が認められましたが、同等他種が多数存在し、最終的に無効判決が出ています。従って、「ラッパのマークの正露丸」以外にも正露丸はたくさんあります。
商標登録されていると誤解されていたものの代表はホッチキスです。日本で最初にホッチキスを販売したイトーキが商標登録したかのように思われていましたが、その事実は無く、現在ではどのメーカーでもホッチキスの名前を使うことが出来ます。アニメ「けいおん!」の佳曲、「わたしの恋はホッチキス」は、商品名だからまずいんじゃないか?と思っていた人も居るようですが、問題ありません。
ホッチキスを明示的に使用しているのは最大手のマックスですが、他のメーカーは一応、ステープラーを名称としているようです。おそらく、マックス社との混同を避けたいのでしょう。間違って、他社商品のクレームの電話が来たりすることもありますのでね。ただし、コクヨは「ラッチキス」、ライオン事務機は「かるホッチ」など、明らかにホッチキスを意識した商品名にしています。
商標問題で思い出すのが「プラモデル」。これは、1959年に、マルサンというメーカーが商標登録しており、他のメーカーはプラモデルと言うことが出来ませんでした。「プラキット」「プラホビー」「プラスチックモデル」などという表記の仕方をせざるを得なかったのです。
その後、マルサンが倒産し、プラモデルの商標権は問屋の三ツ星商事経由で、日本プラスチックモデル工業協同組合に移譲されました。従って、現在では、どのメーカーでも自由に使える名称となっています。
もうひとつ、「デジカメ」も、三洋電機の登録商標です。しかしながら、三洋の登録した「デジカメ」なるものは、「カメラ」に該当する商標ではなく、発電機、電気かみそり、電気マッサージ機などに区分される商標となっていて、デジタルカメラには程遠い概念のものでした。それをこじつけて、「デジカメ」は三洋の商標だ!と宣伝していた時期があります。セコいなと思いました。そんなことをしているから会社が無くなってしまうのです。
「デジカメ」は2019年まで、三洋電機の商標として登録されています。商標権を他社に譲渡しなければ、そのまま消滅ですね。三洋のデジタルカメラ部門は、株式会社ザクティが引き継いでいますが、デジカメの商標権は引き継いでいないようです。
固有であるはずの商品名が、そのまま一般名称となってしまうのは、それだけ唯一無二の存在とも言えるわけで、それは逆に誇らしい事なのではないかとも思います。
「ガタイがいい」のガタイって何?
Facebookで、とみさわ昭仁さんが疑問を呈していた「ガタイがいいのガタイってどういう意味?」という質問が、あっという間に解決した。
http://ameblo.jp/mangetsuhakase/entry-11833774613.html
こちらのブログが引用されているのだが、国語辞典等では、「がかい」、「図体」がなまったもの、などと説明しているが腑に落ちない。という話だ。確かにこれは、こじつけにしか思えない。
とみさわさんの発言にレスを付けた、Yさんというかたの、『(前略)「架台」(鉄道や橋などを支えるもの。建築業界などでの足場として作った台。正確な読み方は「かだい」 )のこともわざと「がたい」と読むのよ。
そこで、「足元がしっかりしている」「どっしりしている」という意味で、「架台がいいねえ」とか使うため、それが「ガタイがいい」の元になったのでは?』
という回答が正解と思う。私も、知り合いに土建屋さんが多いので、架台のことを「がだい」「がたい」と呼ぶのを良く聞いている。
Yさんは「架線の事をがせんと呼ぶ」という事にも言及されていて、これは鉄道ファンなら少しは知っている人も多いだろう。
多くの鉄道ファンが鉄道用語だと思っているが、元々は土木用語であって、河川や下線。仮線などとの読み違えを防ぐため、「がせん」と呼んでいると言われている。その傍証として、下線は「したせん」、仮線は「かりせん」であって、これらも「かせん」とは言わない。(まあ、一般的にも仮線を「かせん」とは読まないと思うけど)
インターネットは何でも分かると思いがちだが、インターネットから比較的遠い世界のことは何も分からないのが実情だ。その最たるもののひとつが土木業界ではないかと思う。
土木業界の用語を明確に文章化したものが少ないために生じる齟齬は意外と多いようだ。ちょっと調べただけでも、「猫車」の意味をちゃんと説明できていない。
wikiの「手押し車」のページによれば、
『猫のように狭いところに入ることが出来ることから来ているという説もあれば、また猫のようにゴロゴロと音を立てることを起因するとする説、裏返した姿が猫の丸まっている姿に似ているからとする説もある。』
などと書いてあるのだが、一番有力な説が抜けている。
私は知り合いの土建屋のMさんに聴いたのだが、猫車とは以下の由来によるものである。
工事現場などで、小さな溝を渡るために、細い渡り板を設置したり、コンクリを打つために仮設の足場を作ったりするが、その狭い橋や足場のことを「猫足場」「猫渡り」「猫走り」などと言う。
これは英語のCAT WALKから来ているものと思われるが、要するに細い木の板で作られた通路と思って頂ければよい。
※参考までに、「犬走り」という用語があり、その対比として、犬走りより狭い通路を猫走りと呼んだ、などという、まことしやかな話も聴いた事があるが、これは明らかに作られた話だろう。CAT WALKと犬走りの関係性が分からないが、犬走りは築城用語として古くから日本にあるので、偶然の一致と思われる。
ここを、荷物を載せて運ぶのに適した車が手押しの一輪車なので、「猫足場で使う台車」という意味で猫車と呼んでいるのである。
唯一、この説に言及していたのは言語由来辞典だが、
http://gogen-allguide.com/ne/nekoguruma.html
『一輪だけでなく二輪の手押し車も「猫車」と呼んだ例が見られ、二輪の手押し車が先か同時期であった場合、猫足場の説は考えにくくなるため、今のところ猫車の語源は未詳と言わざるを得ない』
と、非常に慎重な立場を取っておられる。さすがの一言に尽きるが、私の記憶する限り、昭和40年代までの工事現場で二輪手押しは見たことが無く(※さくてつさんご指摘のとおり、運送業界にはあったそうです)、また、構造上、二輪手押しも猫足場を渡るように作られているものが多いため、この説でおおむね間違いないというのが私の意見である。
もちろん、上記の私の「猫車」に関する説そのものが大間違いの可能性だってあるわけだ。ただ、実際の土建屋さんから直接聞いた話だし、その信憑性は高いと思う。
こういう言葉っていうのは、生きている場所で取材しないと由来とか意味を取り違えることが多い。古い土木用語など、言語学者の興味を惹かないような狭い業界用語などには、いつのまにか消えてしまった言葉も多いのだろう。
そうして、間違った由来が正当化され、それが正しいとされてしまうのだ。これは全ての事に当てはまるが、頭のいい人が適当に考えた由来など、本当に意味が無い。あてずっぽうで知ったかぶりをしたことが、いつの間にか正しい事になってしまう事の怖さと危険性を痛感している。
<補足>
※猫車について、友人の彗星丈二さんから、明治時代に岡山県で使われていた運搬用の一輪車の名称であり、その由来として「狭いところをどこでも通れる」としている説を頂きました。
国会図書館収容の元資料はこちら。
↓
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/839760/41
これは物的証拠もあるので有力ですね!
ただし、形が三輪車なので、いわゆる一輪式の手押し車とは異なっており、おそらくそれらの総称のような形で全部ひっくるめて「猫車」と呼ばれるようになったのでしょう。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1092573/13
こちらは写真付きです。猫車について、「狭いところでもどんどん押していける」とあります。
個人的な意見としては、非常に有力ではありますが、いずれも猫車の使い方に関する説明文であり、言葉の由来とするには少し弱いようにも思います。彗星さん、ありがとうございました。
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